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司法書士   林 嘉彦
社会保険労務士 亀甲 保弘


小説  『重加算税』   ≪ 第2章 売上除外 ≫


−第 1 話 ( 業 界 )−


 お城の桜が春の夜風に散り始めた頃、近くのホテルで、とある総会がシャンシャンシャンと終了していた。 この町の遊戯組合の総会である。 そう、パチンコ業界の寄り合いである。 

 総会の後はそのまま帰る者もいるが、必然的にグループごとの2次会となることが多い。 
 この町のパチンコ業界の経営者は日本人が約 5割、 韓国出身者と北朝鮮出身者が約 5割である。 全国的にもこのような割合らしい。 
 
 パチンコのルーツは米国からもたらされた 『 コリントゲーム 』 であると言われていた。 しかし、その後、横置きの  『 コリントゲーム 』ではなく、縦置きの 『ウォールマシン 』であることが定説になった。
 
 最近パチンコメーカーが海外の有名俳優を起用して、積極的にテレビCMを流しているが、その中で、古代人か野獣か不明な原人がジャングルの中で、板に釘を打ち付けたオモチャで遊ぶシーンがあるが、これはヨーロッパ製の 『 ウォールマシン 』 と思われる。 
 以前のテレビ番組 『 謎学の旅 』 で谷啓がこの 『 コリントゲーム 』 『 ウォールマシン 』 をレポートしたことがあった。

 日本では大正時代に駄菓子屋の店頭から始まり、戦後名古屋を発祥に全国ブームとなった。 昭和 23年に風俗営業取締法が施行され、昭和 25年に玉貸料 1個 2円となった。 昭和 29年に 『 ぱちんこ 』 と言う名前が風俗営業法に規定された。 
 昭和 35年にはチューリップ機が登場した。 第 2期黄金時代の到来である。 

 昭和 50年には 1個 4円の玉貸料となり、 昭和 55年にはフィーバー機が登場して、第 3期黄金時代の到来を向かえた。 この台の登場前は、パチンコ屋は、タバコの煙と雑音の陰気なオジサンの遊び場であった。 客が減り、閉店する店も多かった。 

 この、フィーバー台は革命であった。 当時、パチンコ台 1台の1日の売上が多くて 3,000円といったところであった。 ところが、このフィーバー台は1日に 30,000円以上を売り上げた。 もちろん今では 1台のフィーバー台が売り上げる金額は 100,000円以上にもなっているが、当時、台を変えるだけで、次の日から売上が 10倍になるのである。
 地方のパチンコ屋も 「 そんな馬鹿な台があるわけがない。」 と笑っていたが、噂を聞き都会のパチンコ屋に偵察に行ったものである。

 その後も成長を続け、今や、全国にその数 1万 6千件を数え、事業収入は 35兆円に及ぶ。 国の予算の半額にもなる。 赤ちゃんを含め全国民一人当たり年間 20万円以上のパチンコ玉をはじいていることになる。 温泉街の小さなパチンコ店から、郊外型の大型店舗まで様々であるが、単純に計算すると、一店舗の年間売上は 18億 7500万円、 1日の売上は 520万円ということになる。 恐ろしい規模である。 

 当然毎年脱税の上位ランキングの常習である。 今日の会合の後もそれぞれのグループでそんな話が交わされていた。 どうやって脱税するかの話はほとんどなく、どこのパチンコ屋が調査を受けたとか、査察が入ったとかの話である。 それぞれのグループにそれぞれの悩みもある。 

 韓国出身の者は、戦後日本で成功した実業家として母国では英雄である。 最近はそうでもないらいしいが、以前は母国の親戚縁者の憧れの的で、母国への送金が大変らしい。 中には当然脱税の金があり、国税当局に掴まれないためにも、大変な苦労をして送金する。 送金は危ないので、下関から韓国フェリーで持ち込むことも多かった。 
 
 北朝鮮出身者はさらに大変であるらしい。 不正送金が厳しく監視されるため、新潟に運ぶ。 北朝鮮船籍の不定期貨物船 『 万景岬93 』 である。 『 万景岬93 』 は年間約 30回、主に北朝鮮の 『 玄山 』 と 『 新潟 』 を往復している。
 その他にも日本に寄港する北朝鮮船籍は年間 で  1,000隻にもなる。 これらを利用して不正送金している者もいるという。 その金が場合によっては 『 テポドン 』となって自分達の頭の上に飛んで来るのかもしれないと指摘するものもいるらしい。 

 日本人経営者にも悩みはあった。 暴力団との関係が噂される店もあるからである。 今日の会合の中に、富山興業株式会社の社長富山源吾もいた。 富山興業はこの町では最大手のパチンコ屋である。
 
 富山源吾は、富士山が遠くに見えるこの町が好きで、会社の名前も富士山にあやかって、 『 富山興業株式会社 』 と名づけたのである。

 パチンコ店には、旧来の駅前等の繁華街を中心にした店と、駐車場を備えた郊外型の大店舗とが主流であるが、富山興業の本店は駅前の繁華街の一等地である。 
 ここで儲けた資金で、次々と郊外型の大型店舗を開店していき、今や支店 4店舗を持っている。 この市の南町にある支店名が 『 AAA 』 ( トリプルA )、 東町の支店が 『 BBB 』 ( トリプルB )、 西町にある支店名が 『 CCC 』 ( トリプルC )、そして北町にある支店名が 『 DDD 』 ( トリプルD )である。

 この富山源吾にも悩みがある。 富山は今、お城の見える一等地に豪華な居宅を建築中である。 この居宅が完成すれば、お城の天守閣とそのバックに悠然と聳え立つ富士山を毎日自宅から眺めることができるのである。 しかし、当然、税務署の眼にも触れるだろう。 この点は百も承知で資金は上手く手当して、脱税の金を表に出すようなヘマはしない。 
 ところが、別に裏資金が必要となったのである。 
 
 富山が懇意にしている、いや、懇意にされている暴力団 『 東龍会 』 の 東龍三 がこの度、三代目を襲名したのである。 その三代目襲名披露がこの秋に予定されているのである。 この祝儀資金を捻出しなければならない。 個人が小遣いで出すような額ではない。 
 富山は、最も利益の出ている西町にある支店 『 CCC 』 ( トリプルC ) の店長にその裏金を造るよう指示した。




  第2話 ( 内偵 ) につづく



* 登場する人物、団体等の名称及び業界用語は架空のものです。