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  司法書士   林 嘉彦
  社会保険労務士 亀甲 保弘


小説  『重加算税』   ≪ 第1章 棚卸除外 ≫


−第 1 話 ( 重 審 )−


 「 これは、重加算税は少し無理ではないのかね。」 こう言ったのは署長の野口四郎である。 野口は元々関接税出身で国税局の徴収部次長から、今年の転勤でこの西南税務署にやってきた署長である。

 西南税務署は、管内では特一署で、野口は国税局徴収部次長で定年となるよりは、西南税務署の署長で定年退職した方が何かと都合がよいのである。

 9月も下旬となった昼下がりの署長室に、少し重苦しい雰囲気が流れた。 税務署の重要事項審議会、通称 『 重審 』 の席である。

 副署長の柳川勇が 「 もう少し、仮装隠蔽、虚偽表示が確認できないかね。」 と口を開いた。  少し時間をおいて、統括官の定岡史郎が 「 税理士と一度相談してみましょうか。」 と、小さな声でつぶやいた。 いつもの煮え切らないボソボソ声である。

 松島武志が 「 馬鹿なことを!」 と思った瞬間である。 署長の野口が一喝した。
「 重加算税は、署長が賦課決定するものだ。何が税理士と相談だ。」
定岡は、酒で悪くした肝臓の症状でドス黒くなった顔を少し紅潮させたが、それっきりものを言わなくなった。
 
 署長の野口は、統括官の定岡が字は違うが同じ 『 しろう 』 という名前であることが、いまいましく思えたのであろう。 野口は関接税出身らしく、国税犯則取締法、通称 『 国犯法 』 の考え方を話し始めた。 さすが国税局次長まで昇り詰めた男である。 自分の考えを押し付けるでもなく、包み込むように淡々と語る。

 「 ごもっともです。」 と言わんばかりに、統括官の定岡がうなずいている。 一人松島武志だけが、心の中で 「 なにを馬鹿なことを!」 とつぶやいていた。

  重加算税の課税基準については、国税庁から通達としてその基準が示されている。 当然、棚卸であっても、そこに  『 仮装隠蔽・虚偽表示 』 つまり 『 棚卸除外 』 があれば、重加算税となる。 当たり前の話である。

 通常は、署長・副署長・法人第1統括官の中に、元々からの法人出身の者がいて、適正に重加算税が賦課決定されるのであるが、この署長は、国犯法に汚染されている。 

 副署長の柳川は、昨年、15年間の 国税庁長期出向勤務を終え、国税庁課長補佐から、故郷に副署長として凱旋してきた 50前の男であり、官僚出身ときている。 頼りの法人第1統括官市野は、病欠である。

 松島は今日の重審を苦々しく思っていた。 普通の署なら、 「 よくやった。」 と賞賛されて重加算税が決定するはずである。 
 副署長の柳川が東京弁で得意そうに、 「 だからさ、署長が無理だとおっしゃっておられるのだから、過少申告加算税ということで決まりだね。」 ・・・・・・

 署長室を出た松島に、法人第2部門の長岡が寄ってきた。 長岡は松島よりも4年先輩の特調担当である。 
 法人第2部門は 『 特別調査担当 』、通称 『 特調 』 と言われ、調査困難事案、大口不正想定事案等を担当するエリート調査官の部門である。 一般調査担当で優秀と認められた者が行く部門である。 

 現在、調査官の若年化、調査経験の少ない者が多い中でも、 『 特調 』 といえば調査に対するプライドと技量を備えた集団である。
長岡は重加算税とならなかったことを聞き、 「 売上除外とか、架空仕入とかでない 棚卸では・・・ 」 と、薄ら笑いを浮かべて去って行った。
 その顔には、意味深い安堵感と嘲笑が込められていた。

 実際、棚卸除外による重加算税の賦課決定は、売上除外や架空仕入・架空経費の発見にも勝るとも劣らない件数がある。
 しかし、売上除外や架空仕入はそのまま税金の増加につながるが、棚卸除外は利益の繰り延べに過ぎず、翌年度の原価となる。 つまり翌年度の税金は減少する。 結局、通算すると加算税と延滞税のみが調査による税金の増加であるとも言えるのである。

 こうしたこともあり、税務署の中でも同じ重加算税事案であっても、棚卸除外より売上除外や架空仕入の発見の方がランクが上のように考える調査官が多いのも事実である。
 プライドの高い調査官になると、売上除外や架空仕入等の発見は胸を張るが、棚卸除外の発見は問題外と考える者もいる。

 松島は 「 棚卸であっても、故意に除外すれば脱税だ。 当然重加算税だ。」 と、心で叫んだが声にはならなかった。 
 
 統括官の定岡が松島に、 「 まあ、しょうがないな。」 と声をかけたが、松島には腹立たしく思えただけで慰めにもならなかった。

 その夜、松島は眠れなかった。 このまま引き下がったのでは、腹の虫が治まらない。 まず、署長の考えを崩さなければならない。 座卓に向かった松島は 「 税法六法 」 と 「 法人税法税務釈義 」 そして 「 租税判例集 」 を取り出した。

 27歳の松島にはすでに3人の男の子がいた。 隣の部屋の子供と妻の寝顔を見ながら、スタンドの灯りをたよりに罫紙に2本の線を引いた。 左に会社とのやり取りや調査の事実を書き、中央に説明、右に参考法令等を書くことにした。

 松島は調査の 「 事実認定 」、 「 重加算税の性格 」、 「 行政罰と刑事罰の違い 」、 「 国税通則法第68条に規定された 『 重加算税 』 と、法人税法第159条に規定された 『 罰金 』 との違い」、 「 二重罰解釈 」、更に署長の得意とする 「 国税犯則取締法との関連 」 を書かなければならなかった。

 松島は今日までの調査状況を思い浮かべた・・・・


第2話 ( 持論 ) につづく


* 登場する人物、団体等の名称及び業界用語は架空のものです。